プログラム概要
リワークとは
多様化する職場環境や人間関係の中で、そこに付随して起こるストレスも多様化しています。実際に、厚生労働省が行った調査によると、『仕事上のストレスが大きい』という理由が離職理由の第2位となっているのが現状です。そうした社会情勢の中で、ストレスを契機とした心身の不調から休職となる方も多く居るのが現状です。そうした休職状態から復職するにあたり、日本ではリハビリ出勤や仮出社による段階的措置がなされる職場も多くありますが、実際には再発・再休職に至るケースや離職してしまうケースなども見られており、回復過程におけるストレス場面を含む職場復帰の困難の大きさがうかがわれます。
こうした回復過程におけるリハビリテーション及び復職後を見据えたストレス対処を習得する場としてリワークが位置づけられ、医療分野の一角として実施されています。大きくは『ストレス・マネジメント能力の習得』『認知機能の回復』『コミュニケーションスキルの習得』『身体的・体力的回復』を柱としたプログラムから構成されており、その実施に伴い復職及び復職後のリスクを低減させていくことを目的として行うリハビリテーションとなります。
参加の流れと目的
週2-3日程度から開始し、状態を踏まえて参加日数を増やしていきます
参加プログラムの流れ
- 基礎体力及び慨日リズムの安定
- 作業力及び状態の安定
- 人間関係構築・維持によるストレス対処
- 再発・再燃防止
- 基礎体力及び慨日リズムの安定(『身体的・体力的回復』に該当)
《プログラム:ヨガ、スポーツ、心理教育、作業療法》
抑うつ状態での休職に入ると活動性が下がり、基礎的な体力が落ちてしまう方が多く見られます。また、症状の1つとして睡眠が整わないなど自律神経系や慨日リズムが乱れてしまうケースも少なくありません。そうした状態は、復職後の疲労感の増大や回復力の低下といったリスクとなり得ます。そのため、まずは基礎体力及び概日リズムを整えるための知識の習得(心理教育)や体力作り(ヨガ・スポーツ)、集中と緩和による自律神経系への刺激(作業療法)を行っていくことが有効となります。 - 作業力及び状態の安定(『認知機能の回復』に該当)
《プログラム:プレゼン、作業療法、スタディグループ、スピーチ》
抑うつ状態の症状の1つに、認知機能の低下が挙げられます。認知機能とは、物事の理解・判断、論理的思考、推論、記憶、集中力といった能力の総称となります。こうした能力が症状により低下することがあり、他の身体的・気分的な症状が改善しても残存するケースも多々見られます。復職後の業務を行うにあたり問題となりやすい側面でもあるため、論理的理解とアウトプットの構築による論理的思考の改善(プレゼン、スピーチ)、実質的な学習を行う上での集中力・記憶力の測定と向上(スタディグループ及びその中での作業検査)を行っていくことをリハビリテーションとしています。 - 人間関係構築・維持によるストレス対処
(『コミュニケーションスキルの習得』に該当) 《プログラム:コミュニケーションワーク、スポーツ》
社会におけるストレスの多くは、対人関係の中で起こると言われています。役割がある中での発言や非言語も含めた動き方などの知識の習得やその実践(コミュニケーションワーク)、フリーな場での立ち位置の取り方や考え方(スポーツ)など状況によってその場の状態を読み取り、その中で発言を含めた動き方をスキルとして習得し、実践的に使うことができるようになることが、復職後のストレス対処として大きな役割を担うものと思われます。 - 再発・再燃防止(『ストレス・マネジメント能力の習得』に該当)
《プログラム:認知行動療法、心理教育》
症状が軽快して状態が戻ってきたとしても、ストレス場面の多くを担っていた職場へ復職することは大きなリスクがあります。その中で大切になるのが、同様の環境下においても再発・再燃をどのように防ぐかという観点です。この点を考えるにあたり、まず必要になるのが、環境に対する自身の心身の動きを知ることです。そこに、どういった理論が介在しているのかを含めて、明確に理解していくこと(心理教育)がストレス・マネジメントへの基礎となります。自身を理解した上で、その思考や行動がどういった影響や結果を促したのかといった流れを汲み取り、修正すべき点を見つけて変化させていく(認知行動療法)といった介入を行うことで、同様の環境下でのストレスを調整していくことができるようになります。
プログラム以外での活動
【オフィスワーク:自習】
- 復職が近くなると、業務に近しい作業や会社から課された課題・勉強などを行って負荷を増やしていくことも必要となります。集中力や疲労のサイン、認知機能検査結果などをもとに相談をしながら進めていきます。
- パソコンの貸し出し可能
【記録及び評価表の作成】
- 各個人での生活及び症状の記録、デイケア内外での状態の評価をご本人・スタッフにて定期的に行います。必要に応じて、公認心理師からのフィードバック面接も行います。
復帰までのプロセス
ご希望があれば職場と連携を取ることが可能です
(産業衛生スタッフや上司等との情報共有など)
復帰までのプロセス
時間割
午前 10:50-12:30 |
月 | 心理教育 各分野の専門家によるプレゼンと振返り・ディスカッションを行っていきます。 《内容》 復職へのプロセス 睡眠の認知行動療法 服薬・栄養指導 社会資源 など |
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火 | ヨガストレッチ 外部専門講師による、ピラテスによる体力作りの要素やリラクゼーションも盛り込んだヨガを実践します。 |
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水 | 認知行動療法Ⅰ 前半はアメリカでマインドフルネスを学んだ講師により、その考え方の講義と実践を行います。後半は、復職を見据えたストレス対処としての認知行動療法を行います。 |
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木 | 作業療法 数種の手先を使う作業から選択し、実際に集中した時間を過ごして頂きます。 作業療法士による指導を含め、作業力の向上を図っていきます。 |
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金 | 3分間スピーチ 参加者から挙げられた題目について、決められた時間の中で準備をしてスピーチを行っていきます。 |
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12:30- | 昼休憩 | |
午後 13:30-15:30 |
月 | メタ認知トレーニング うつや不安症状を持つ方に特徴的な考え方を学び、柔軟な考え方ができるような練習をするプログラムです。 |
火 | プレゼン パワーポイントなどを使用して事前にプレゼン資料を作成し、1時間程度のプレゼンを実際に行っていきます。 |
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水 | スタディ・グループ 自習マテリアルを選択し、自身の疲労度や進行ペースを確認しながら取り組んでいきます。 毎月第2・4週には、認知機能を測る検査を行い、客観的評価を行います。 |
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木 | 認知行動療法Ⅱ 公認心理師の指導のもと、各人が持っている考え方・捉え方の癖に気づき、実生活の中で柔軟な考え方への置き換えや受け入れを実践していく学びの場になります。 |
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金 | スポーツ 外部専門講師により、デイケアルームでの体幹トレーニングを主とした運動療法を行います。また、活動記録とその振り返りを行い、行動目標を立てて新しい生活習慣の獲得を目指します。 |
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15:30- | 振り返り・自主学習 |