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高次脳機能障害であると診断されるまでの検査の流れ

高次脳機能障害であると診断されるまでの検査の流れ高次脳機能障害であると診断されるまでの検査の流れ

高次脳機能障害であると診断されるためには、「1.脳の損傷」により「2.頭の働きの低下」が起きていることを証明する必要があります。頭の働きは、例えば、疲れていたり眠かったりする時、お酒を飲んだ時、悩みで頭がいっぱいな時…など、脳の損傷(病気やケガ)がなくても、低下します。これら脳の損傷を伴わない頭の働きの低下は高次脳機能障害とは呼びません。よって、高次脳機能障害の診断には、「1.脳の損傷」を確認することが必須です。具体的には、MRIなどの脳画像検査を受けて頂く必要があります。また、「2.頭の働きの低下」を確認するために、問診表に答えて頂くほか、知能(IQ)テストなどの試験(神経心理検査)を受けて頂く必要があります。


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スライドは、粳間剛講演会資料1)より改定転載
*講演資料1). 一般財団法人ライフ・プランニング・センター主催
「医療従事者が知っておきたい高次脳機能障害の理解とリハビリテーション」
2012年10月6日東京


1.脳画像検査~「1.脳の損傷(脳の病気やケガ)」の証明のために~

Step1.通常検査

「1.脳の損傷(脳の病気やケガ)」の証明のために必須の検査になります。通常はMRIが用いられます(体内金属や閉所恐怖症などでMRIが受けられない場合にはCTスキャンで代用します)。当院には検査施設がないため、慈恵医大柏病院と連携をとっています。当外来受診の際に紹介状の用意・予約をいたしますので、慈恵医大柏病院を受診するのは検査当日のみで済みます。受診当日は当院の紹介状・FAX予約用紙をご持参のうえ、初診受付へご提出下さい(慈恵医大柏病院ホームページ「受診の手続き」[なお、事前に前医で検査がなされていた場合、検査結果CD-ROMをお持ちいただくことで代用できる場合があります]

このStep1の通常検査の段階で、頭の働きの低下の原因となる「1.脳の損傷(脳の病気やケガ)」が証明された場合は高次脳機能障害の行政診断基準を満たしますので、ほとんどすべての社会資源利用が可能になります(例:精神障害者保健福祉手帳の取得、障害者自立支援制度の利用、障害年金の取得、[交通事故による脳外傷の場合における]自賠責保険等級認定、労働災害保険の等級認定、など)。また、この結果をもとにして、当院での高次脳機能障害治療プログラムを実施致します。

Step2.画像解析

全ての脳の病気やケガが、Step1の通常のMRI/CTスキャンで証明できる訳ではありません。検査感度には限界があります。よって、Step1の通常検査で「1.脳の損傷(脳の病気やケガ)」の証明が出来なかった場合も、脳の損傷が全くないと断言することは出来ません。微細な脳の損傷が存在している可能性があります。この微細な脳の損傷を検出するために、当外来ではMRIなどの画像検査の結果をコンピューターで解析する「画像解析」を行っています。当院で画像解析を行うことができる検査は、慈恵医大柏病院のMRIの検査結果CD-ROM (当院から紹介を行った場合のみ)・慈恵医大柏病院のシンチ(RI・SPECT)の検査結果CD-ROM・八重洲メディカルクリニックのMRI検査結果CD-ROM (当院から紹介を行った場合のみ)です。[ご持参頂いた前医での検査結果CD-ROMからは画像解析が行えません]

一方で、このStep2の画像解析で、頭の働きの低下の原因となる「1.脳の損傷(脳の病気やケガ)」を検出できたとしても、高次脳機能障害の行政診断基準を満たしません。そのため、利用可能になる社会資源利用は限定されます(例:精神障害者保健福祉手帳・障害者自立支援制度。障害年金は利用可能となることが多いですが、自賠責保険/労働災害保険などの等級認定はなされないことがほとんどです)。この結果を元に、当院での高次脳機能障害治療プログラムに参加することは可能です。

上の図は軽症脳外傷(脳震盪)後の高次脳機能障害のかたのMRI画像解析結果です。通常のCT/MRIでは脳の損傷が検出できず、上記の様な画像解析(morphometry)でしか異常を検出できませんでした(典型的な外傷に伴う脳萎縮パターンを捉えられています)。この検査結果から、精神障害者保健福祉手帳取得・障害年金取得・自立支援制度利用のための障害認定が受けられましたが、交通事故の自賠責保険における高次脳機能障害等級認定を受けるまでには、数年間裁判を行う必要がありました。

*資料4). 粳間剛ほか.「精神障害(うつ)」と「高次脳機能障害」の脳形態画像・機能画像所見を比較する試み—MRI・SPECTを用いた頭部外傷後の症例における検討—. The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine 51(10), 662-672, 2014

*資料5). Uruma G et al. Evaluation of Regional White Matter Volume Reduction after Diffuse Axonal Injury using Voxel-based Morphometry. Magn Reson Med Sci. 2015 Feb 12. [Epub ahead of print]

上の図は発達障害のかたの例です(成人以前の軽症脳外傷(脳震盪)による)。通常のCT/MRIでは脳の損傷が検出できず、上記の様な画像解析(拡散テンソル画像解析)でしか異常を検出できませんでした(外傷に伴う神経線維の異常を捉えられています)。この検査結果をもってしても、交通事故の自賠責保険における高次脳機能障害等級認定を受けることは出来ませんでしたが、精神障害者保健福祉手帳取得・障害年金取得のための障害認定が受けられました。

脳画像検査に関する注意事項

  1. Step1通常検査の結果説明は、CD-ROMをご持参された当日に高次脳機能障害専門外来を受診された場合も、同日に可能です。一方で、CD-ROM画像結果の電子カルテ取り込みに30分程度のお時間を頂いているため、外来予約時間30分前には受付にCD-ROMをお渡し下さい。
  2. Step2画像解析は内容により、数時間-数日間の解析期間が必要になります。よって、CD-ROMをご持参された当日に専門外来を受診された場合、同日に画像解析結果まで説明することは非常に困難であり、後日の再受診をお願いしています。また、同日に解析結果説明を希望される場合も、Step1通常検査で異常が検出されないことを確認し、結果説明を行ってから解析作業に入っておりますので、一旦診察室を出られて、画像解析終了までお待ちいただく形になります(それでも、外来混雑状況や受診時間・解析内容などにより、後日の再受診をお願いする場合がありますのでご了承願います)。
  3. 事前に、画像解析結果が診断に必要とわかっている場合は、結果説明のための外来受診日よりも前に、CD-ROMを受付に届けて頂くようこちらからお願いする場合があります。
  4. 上記の拡散テンソル検査は慈恵医大柏病院では行えないため、八重洲メディカルクリニックを受診して頂く必要があります。
  5. 検査費用:通常の健康保険適用です。

MRIのみの場合実費としてお支払い頂くのは、10000円前後+初診料+紹介料+α、
シンチ(RI・SPECT)にかかる実費は25000円前後+初診料+紹介料+αです。

2.神経心理検査

当院心理士による知能(IQ)テストなどの試験です。当外来受診の際に予約が可能です。知能(IQ)テストに必要な時間は通常2時間程度ですが、数回に分けて検査を行うことも可能です。特に、疲れやすい患者さんの場合などで、無理に一度に検査を行おうとすると大きく成績が低下する場合があります。知能(IQ)テストのみでは異常が検出できない場合は、その他の試験を追加する場合もあります。
この神経心理検査の結果と画像診断の結果を照らし合わせることで、高次脳機能障害であると診断できるだけではなく、その重症度も推定することができます。この結果を元にして、当院での高次脳機能障害治療プログラムを実施致します。

高次脳機能障害ではないと診断された場合

上記の検査を経て、高次脳機能障害ではないと診断された場合でも、高次脳機能障害以外の何らかの精神疾患である可能性があります。その場合も、当院の精神科専門医による外来診療継続、治療プログラム参加が可能です。

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