心療内科・精神科 | 柏駅前なかやまメンタルクリニック|オレンジクラブDについて

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集団メンタルリハビリテーションデイケアプログラム「オレンジクラブD」について

集団メンタルリハビリテーションデイケアプログラム「オレンジクラブD」は、高次脳機能障害の当事者・ご家族のための、「encouragement:困難に立ち向かう活力を与えること」を目的とした通院治療プログラムです。

ここでは、三輪書店「高次脳機能障害ファシリテーター養成講座」に掲載された、リハビリテーション科による高次脳機能障害・集団通院治療プログラム(オレンジクラブR)の解説をもとに、集団メンタルリハビリテーションデイケアプログラム「オレンジクラブD」の流れを説明します。


東京慈恵会医科大学リハビリテーション医学講座において行われた先行プログラム(オレンジクラブR)は、半年間を1クールとし、週1回、上図のような予定で行われていました。
参加者は、高次脳機能障害の当事者の患者さん(以下、当事者)とご家族が3-5組、医師(Dr)・作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)を中心に、見学参加者と合わせて、合計15-30名程度でした。
オレンジクラブDは、このプログラムを、精神科デイケアプログラムに組み込んだものです。



羅心版①:主役が「やりたいこと」を3つあげる

オレンジクラブの中心となる集団セッションは「羅心版」と呼ばれています。
羅心版で最初にやることは、その日の主役(当事者)に「やりたいこと」を3つあげてもらうことです。 写真およびマンガでは司会(ここではDr)が主役に質問し、今思いつく「やりたいこと」を3つあげてもらっています。 そして、書記が、主役の思いついた3つのことを記録しています(写真ではPCスライドを使用していますが、漫画ではホワイトボードを使用しています)



羅心版②参加者が順にアドバイスをあげていく

主役のやりたいことが3つあがったら、参加者(主役以外)が順にアドバイスをしていきます。参加者一人につきアドバイスを一つずつ、順番にあげていってもらいます。アドバイスは、主役のやりたいことの実現につながる「今日からすぐできること」をあげましょう。その際のルールとして、Positiveな内容のアドバイスをこころがけて下さい(=positive feedback)。また解説マンガのDrのように、「そのアドバイスがどうしてやりたいことの実現につながるのか?」 簡単に説明を付け加えるのがよいと思います。理由を明確にしたほうが、より、動機付けにつながります。主役にとってだけでなく、参加者にとっても、その場で考えてアドバイスをすることは時に大変なこともあります。 アドバイスが一つあがる度に、参加者は拍手をして下さい。これもPositive Feedbackです。


羅心版③主役が「今日からはじめること」を選ぶ

羅心版の最後に、参加者にもらったアドバイスの中から、主役が「今日からはじめること」を一つ選びます。アドバイスは、あくまで選択肢を増やしているだけに留め、何をはじめるのかは、主役が自分自身で選ぶことが重要です(choice-makingといいます)。このchoice-makingが、当事者のやる気と活力を引き出すための鍵になります。当事者によってはこの決断が難しい場合もあります。その場合は、「アドバイスであがったことをはじめると、なぜやりたいことの実現につながるのか?」理由を再度確認し、明確にします。解説マンガでは、たくさんのアドバイスの中から、「カナダの友達にクリスマスカードを贈る」ことが選ばれています。「カナダの友達に会いたい」、将来的にこのやりたいことを実現させるために、まずはクリスマスカードを贈って会いたい気持ちを伝えることになりました。確かにこれは「今日からはじめられること」です。「今日からはじめること」が決まったら、羅心版の集団セッションはおしまいです。 「はじめること」の内容によっては、集団セッション終了直後に個別の指導を付け加えることもありました。この解説マンガの主役のA子さんに対しても、羅心版終了直後に、翌週までにクリスマスカード作りに必要なものを家族と準備してくることをOTが指導しています。

2週目のオレンジクラブの流れ

1.(上段). 個別作業療法(個別OT)

先週の主役とOTによる個別のセッションです。主役がはじめたことの経過は、翌週のオレンジクラブRの個別セッション「個別作業療法」で振り返り、確認をします。そして、翌週のオレンジクラブRの個別セッション「個別作業療法」でクリスマスカードを完成させています。

2.(下段).集団認知訓練(集団リハビリ)

前の週の羅心版で主役を務めた人を除く当事者全員が集団認知訓練を受けます。ここではSTによる集団認知訓練をうけています。

3.(中段). 家族療法セミナー

当事者の家族全員がDrによる障害の説明を受けます。主に、先週の主役の障害の病態像について解説し、障害に対する理解を深め、周囲の協力・支援体制を整えます。現在すでに、この家族療法セミナーの部分は独立して、毎週水曜日16時-17時に行われています

羅心版⑤.2週目以降の羅心版-1週目主役はアドバイス参加

2週目の羅心版の主役は、先週の主役(A子さん)とは別の当事者(ここではB男さん)が務めます。
先週の主役はアドバイスする側で参加します。このように当事者が順番で、主役とアドバイス役の両方を務めて行きます。3週目の個別セッションでは、A子さん(1週目の羅心版主役)は集団認知訓練に参加し、B男さん(2週目の羅心版主役)は個別OTに参加します。このように毎週のオレンジクラブのプログラムは進んでいきます。

羅心版⑥.2巡目の羅心版(A子さん主役2回目)

①はじめたこと結果発表

2巡目の主役が回ってきた際、前回の羅心版を通じて「はじめたこと」の結果を発表してもらいます。 この解説まんがのモデル、当事者A子さんにも完成したクリスマスカードを読んでもらいました。非常にスラスラとクリスマスカードを読み上げることが出来ていました。それまで、主役の場合もアドバイス側の場合も、発言するまでに非常に時間がかかっていたため、スラスラ英語を読む姿は参加者にとって驚きだったと思われます。この「はじめたこと」を通じて、言いたいことを事前に書いておいて読む、などの代償手段の有効性がわかり、積極的にこれを使う動機付けにもつながりました。また、その姿を見せることで周囲の理解を促され、「待つ協力」にもつながり、治療的環境も作られていっています。

②羅心版を作る

この「はじめたこと」の経験を通じて、自分を振り返ってもらい、「自分の羅心版」を作ります。 自分で自信を持つことができた「注意・集中」「意欲・発動性」「遂行機能」「現実感」は良い点として青色・緑色がつけられました。反対に、苦手である自覚が持てた「抑制」「見当識」「運動・姿勢」は問題点として黄色がつけられました。このように、「はじめたことの結果発表」→「自分の羅心版を作る」→「2回目の羅心版(主役2回目)」の順で、2巡目以降のオレンジクラブの羅心版は行われていきます。

オレンジクラブ前後の変化

半年間のオレンジクラブRのプログラムを終えても、参加した当事者の神経心理テストの成績に明らかな変化は認められませんでした(IQテストなどの成績は変わらない)。一方で、行動面には変化が見られ、より積極的な社会参加をしようという姿勢が全員に見られました(例:人前でほとんど話そうとしなかったのに、積極的に発言するようになったケースや、自信が無く自ら社会参加することは困難だったのに、市民音楽団体に積極的に参加するようになっていたケース等)。
正規参加した当事者6名の、オレンジクラブR参加前後の脳機能画像検査結果を比較すると、両側の前頭前野とその周辺領域に有意な変化が認められました。特に、最も顕著な変化が認められた領域は内側領域でした(左図で、大きな改善が見られた部分が赤くなっています)。
ここで変化が見られた前頭前野の内側およびその周辺領域は、注意・記憶・遂行機能のみならず、 自発性・やる気・意欲・モチベーション(motivation)などといった「社会的行動のための活力」に関わる多機能な領域です。
この領域の担う様々な機能を、神経心理テストや当事者の行動面に見られた変化と照らし合わせると、オレンジクラブR参加前後の経過と最も関連していると考えられる機能は、社会的行動のための活力に関わる部分の機能と考えられます。特に、正規参加した全例に社会参加する姿勢の変化が見られ、積極性が増しています。
よって、羅心版およびオレンジクラブを行う意義は、社会復帰のための「動機付け(=encouragement:困難に立ち向かう活力を与えること)」にあると換言出来ると思われます。



この3つのスライドは、治療前後の脳循環代謝の変化を、集団メンタルリハビリテーション以外の治療(従来法)と比較した図です(図は全て、左側がオレンジクラブR)


左上図:半年間の個別リハビリ(通常プログラム)との比較。通常プログラムでは改善部分がはっきりしません。
右上図:半年間の個別作業療法(高次脳機能障害訓練プログラム)との比較。違うパターンの変化が見られています。
左下図:薬物療法(抑肝散)との比較。これも、違うパターンの変化が見られています。


以上より、オレンジクラブは、従来の治療法にはない、新しいメカニズムで脳に影響を与えていると考えられます。

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